2017-12-09

Microsoft Office Onlineの不思議な制限(Microsoftのクライアントビジネスの凋落が始まるかもしれない)


Microsoft Office Onlineは不思議な制限があります。それがMicrosoftがモバイルビジネスでうまくいかない理由ではないかと感じていますし、今後、ユーザのMicrosoft離れを加速するのではないかと懸念しています。


今年の春に今までのiPadをiPad Proに買い替えたユーザは驚いたかもしれません。
これまでモバイル環境で使用できていたMicrosoft Office Onlineが、iPad Proでは突然読み取り専用アプリに変わってしまいました。


Chromebookは日本ではまだなじみは薄いですが、海外では大きく普及し、モバイルパソコン市場ではAppleよりもシェアが上まわってきています。Chromebookのユーザも、これまでの安価で安いモデルからSamsung Chromebook Plus / ProやAsus Chromebook 302CAに買い替えた人は、新しいデバイスではMicrosoft Officeで突然編集のできなくなってびっくりしたでしょう。

なぜ新しいデバイスでは、Microsoft Office Onlineは読み取り専用になってしまうのでしょうか。
これはいずれも新しいデバイスでは画面サイズが大きくなったからです。


Microsoft Office Onlineは画面サイズが10.1インチ以下のモバイルデバイスに限り無料で使用でき、それ以上のサイズではOffice365の契約が必要となるという制限があるのです。
そのため、たとえiPadやChromebookといったモバイル端末であっても、画面サイズが10.1インチを超えるデバイスでMicrosoft Officeの編集機能を使うためには、Office365の契約が必要となります。
Office365に契約すればこれまで通り、iPadやChromebookでも、Microsoft Officeの編集を行うことができます。


問題は、Office365に契約したからといって、モバイルで使用するOffice Onlineの機能が大きく機能が向上するわけではないことです。

Office365に契約して、編集できるようになったとしても、デスクトップ版のようにすべての高機能が使えるわけではありません。基本的には10.1インチ以下のデバイスで使っていた無料版と同じことしかできません。有料版では若干の編集機能の向上があるだけです。VBAは利用できませんし、編集機能も向上したといってもデスクトップアプリから見たら、非常に機能が少ないままです。

Office365ではOffice2016など最新バージョンが使えますと宣伝しています。ただそれはPCユーザにとってだけです。モバイルデバイスしか持っていないユーザにとっては、関係ありません。

特に日本の場合は、一般的にはパソコンにはすでにOffice 2010や2013や2016がプレインストールされています。iPadやChromebookの為にOffice365を契約してもあまりメリットはありません。
もしMicrosoft Officeが入っていないパソコンを使用している場合でも、ブラウザでMicrosoft Office Onlineにアクセスすれば、基本的な機能を無料で使うことができます。(PCなどからブラウザでMicrosoft Office Onlineにアクセスして使用する場合は、画面サイズの制限はありません)。

殆どのユーザにとって現時点でOffice365を契約するメリットはOneDriveが1TBになるぐらいです。ただ、そのOneDriveもDropboxやGoogleドライブに比べると、転送速度は遅く、同期は不安定でまだまだ安心して使えるレベルではありません。
今現在ではOffice365を契約するメリットはまだ小さいと言えるでしょう。


そこで代替として使うユーザが増えてきているのがGoogle Appsです。
Google AppsはGoogleが開発したOfficeアプリで、ウェブベースでブラウザ上で動作します。そして利用料は無料です。

Google Appsの機能はデスクトップ版Microsoft Officeと比べると劣りますが、Microsoft Office Onlineと比べると遜色ありません。
Google AppsはChrome ブラウザから簡単に起動できますし、FirefoxやMicrosoft Edgeでも利用できます。
更に、Googleは無料で15GBのオンラインストレージスペースを提供しています。素晴らしいのは、Google Appsで作成したGoogle Apps形式のファイルはストレージスペースにカウントされないことです。つまり、Google Appsを使用することで考えれば、事実上無制限にファイルを作成することが可能ということになります。(Microsoftは、なぜかOneDriveで無料で使用できるサイズを5GBに削減するということをしています。さらにOneDriveではMicrosoft Office形式で使用するファイルもファイルサイズにカウントされてしまいます)

更にGoogle AppsではGoogle Apps Scriptを使用することができます。ここが、Microsoft Office Onlineと比べて、Google Appsが大きく勝っている点です。
Google Apps Scriptは、いわゆるマクロの機能です。Microsoft Office Onlineと違い、このマクロ機能が無料で使えます。

Google Apps Scriptはオンライン上で動作するため、オンライン独自の動作も非常に容易にできますし、Gmailなどをコントロールしたり、Google Driveと連携することも可能です。



Google Apps以外の代替手段もあります。

Appleのユーザであれば、Google Apps以外の代替手段もあります。例えば、iPadのユーザであれば、AppleのOfficeアプリに移行することもよいでしょう。もしMacやiPhone
も使っているのであれば、同じアプリケーションがすべてのデバイスで、無料で使用できます。
iCloudというオンラインストレージもあります。同期などの性能はDropboxやGoogleドライブと比べると性能はいまいちですが、すべてがAppleの製品のユーザであれば、iCloudへのアクセスは非常に容易で、非常に使い勝手が良いサービスですね。

ただAppleデバイスユーザ以外にはあまり使い勝手の良いサービスではありません。



一般的なユーザが使用するOfficeの機能はOffice Onlineレベルで十分でしょう。マクロは使うことはあまりないでしょうし、簡単な文章や表計算ができれば十分という方が多いはずです。そういった場合、無料で使えるGoogle Appsは有力な代替サービスです。

代替案の一つであるGoogle AppsはWordやExcelなどMicrosoft Office形式のファイルを編集してMicrosoft Office形式で保存することもできますので、Microsoft Officeのユーザとのデータの交換も問題ありません。


使い勝手の面からいっても、タブレットやChromebookなどといったモバイルデバイス上では、Google Appsのほうがユーザに受け入れられやすいでしょう。軽快に動作し、同期も安定しています。
モバイルデバイスでは、デスクトップ版ほどの機能は必要ないですし、そのためだけにデスクトップ版と同じ使用料金を、支払いたくはないでしょう。



一度Microsoft Officeの使用をやめたユーザは、なにも困らないことに気づき、二度とMicrosoft Officeに戻ってこなくなるのじゃないでしょうか。


iPadの標準ディスプレイサイズが10.5インチとなり、海外で非常に普及しつつあるChromebookも、ディスプレイサイズが10.1インチを超えるものが増えてきています。
もし、今後もMicrosoftがMicrosoft Officeのディスプレイサイズ制限を緩和・撤廃しなければ、今後、一般ユーザのMicrosoft離れは急速に進むと考えらます。

その結果、かつてのInternet Explorerと同じようにクライアントビジネスでのシェアも急速に失っていく恐れがあると思うのです。

10年後、気づくと、以前の「一太郎」やInternet Explorerが層だったように、「そういえば、Microsoft Officeっていつのまにか使わなくなったね」となっている気がします。


Windows Mobile戦略といい、Microsoftには、利益以外の視点、ユーザ指向の「ビジョン」が欠けている気がします。Microsoftにも素晴らしいアイデアはあるのでしょうが、実際にリリースされるまでの間に、既存ビジネスへの影響が及ぶことを懸念してしまって、魅力的な機能を潰してしまっている気がします。

例えば、Windows Phoneの戦略はうまく行けば非常に強みを打ち出せた可能性があったと感じています。スマートフォン、タブレット、デスクトップまですべてWindowsのシステムで動作させることができる可能性がありました。今後、スマートフォンやタブレット、シン・クライアントが普及し、デスクトップが衰退していったとしても、タブレット、スマートフォンのクライアント環境を維持することができたでしょう。引き続き、インターネットへの接続の入り口として、Office製品をはじめとするアプリケーションの提供元として、Microsoftの地位は盤石だったのではないでしょうか。

特に、Continuumは大きな可能性を秘めていたと思います。発表当時はまだスマートフォンの性能が十分ではありませんでしたが、この後2,3年もすればスマートフォンは今のPC並の性能かそれ以上の性能を持つようになるでしょう。その場合、スマートフォンを時にはデスクトップパソコンとして使用するということも十分に普通のことだったに違いありません。

しかし蓋を開けてみると、Continuumはキーとなる機能に制約が大きすぎました。
Continuumは全画面表示しかできませんでしたし(ウィンドウ表示のできないWindows)、最新スペックのハードウェアの投入も見送られました。
Microsoftは既存PCソフトウェア事業への影響を恐れたのだと思います。もしContinuumが普及してしまったらパソコン離れが加速されてしまう。そうなるとWindowsOSやMicrosoft Officeが売れなくなってしまう。その結果、機能は削られ、制限され、魅力的と言えないデバイスとなってしまいました。

利用できるアプリもiPhoneやAndroidと比べて大きく不足していた Windows Phoneはシェアを獲得することなく収束することとなりました。


そこに未来はあったと思います。ただ、既存ビジネスへの執着が飛躍を抑えてしまった気がします。

そしてMicrosoftはモバイルコンピューティング分野では大きく遅れることとなりました。

クライアント分野では、これまで通りのデスクトップ環境のビジネス以外は上手くいっていないように感じます。タブレットも売れていませんし、Windows Phoneは収束してしまいました。




けれど、Microsoftが自分を守る為に自社製品でいくら機能制限をおこなっても、そこには可能性があり、Microsoftが進出してこない分、新たな参入余地/可能性が他の企業に広がります。そして他の企業からは新しい魅力的な製品が発表されてきています。


今年、iPadはiOS11で、よりパソコンのような操作性を手に入れました。マルチタスクが可能で、ペンの入力もでき、ファイルのアクセスも柔軟となりました。

SamsungはDex Stationで、かつてのWindows phoneのContinuumのように、スマートフォンをデスクトップPCとして使用する環境を整えました。

同じくHUAWEIもMate 10でデスクトップPCとして使える機能を搭載してきます。


GoogleはChromebookの高性能化を図り、先日フラッグシップとしてPixelbookを発表しました。このChromebookはこれまでのChromebookの概念を大きく変え、CPUはCore i5やi7、ストレージも256GBなど、仕様だけを見れば、一般的なパソコンと変わりありません。
ASUSやSamsungといったChromebookメーカーもIntel core m3, m5, m7のCPUを搭載し、メモリも4GB、ストレージも64GBに引き上げた高性能Chromebookを相次いでリリースしています。
そして、ChromebookではAndroidアプリも使用できるようになり、Chromebookで行えることが一気に増えました。


こういった状況をみて、Microsoftも焦ってきたのでしょう。軽量に動作するWindows 10Sや、ARMで動かすWindows 10 PCを発表しています。

ARM版のWindows10やWindows10SはChromebookへの対抗措置でしょう。
まだ数字的にはでていませんが、iPad Pro発売後、Office Mobileのシェアの低下も始まっているに違いありません。

ARM版のWindows 10が成功するかどうかは、実際のところ起動時間や動作スピードがどうなるかにかかってくるでしょう。今のところ、アプリなどはx86をエミュレーションしているだけのようなので、chromebookほどの軽快さは感じられないと思います。

Windows 10Sはアプリケーションがどれだけ揃うかですね。ただWindows8からずいぶん時間が経ちましたが、Microsoft storeで使えるアプリケーションはまだまだ貧弱です。


Microsoft Officeをはじめとするクライアントビジネスは、Microsoftにとって今後も非常に重要な製品だと思います。


Microsoft 製品がユーザとの接点を失わないためにも、よりユーザ指向のサービス/製品を早急に展開する必要があると思います。

まずは、Office mobileのディスプレイサイズの制約を取り外し、OneDriveのパフォーマンスと信頼性を上げ、モバイルデバイスユーザのMicrosoft Office離れを抑える必要があるでしょう。
モバイルデバイスのみのユーザ向けに、VBAを提供する必要もあるでしょう(こちらは有料サービスでもかまわないと思います)。


そして、Windowsシステムも含めて、ユーザ指向のサービス内容に早急にしていく必要があるように感じます。そうしなければ、2020年のWindows 7のサポートの終了をきっかけとして、Microsoftのくライアンとビジネスには陰りが見えてくるでしょう。ユーザは、パソコン離れ、Microsoft離れをし、スマートフォンやタブレット、Chromebookへと移っていきます。10年後にはMicrosoftの影響力は、大きく衰退し、Microsoftはエンタープライズ向けのクラウドサービスを行う企業となってしまい、AmazonやGoogleと競合する企業の一つになっている可能性があると思います。

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